トップメッセージ

社長就任25年、人を大切にする文化が奥村組のものづくりを支える
私が奥村組の代表取締役社長に就任してから、2026年12月で25年を迎えます。この間、一貫して大切にしてきたことは、「人を活かし、大切にする」企業文化を育み、人の力によって成長し続ける企業グループを築くことです。ここでいう「人」とは、当社グループの役職員だけを指すものではありません。お客さま、協力会社の皆さま、株主・投資家の皆さま、地域社会の皆さまなど、当社グループに関わる全てのステークホルダーを指しています。それぞれの声に真摯に耳を傾け、その立場を尊重するとともに、事業活動を通じて生み出した価値を広く分かち合うことが、奥村組の経営の基本です。建設業は、当社のような元請企業だけで成り立つものではありません。多くの協力会社の皆さまに技術や経験を発揮していただきながら、力を合わせることで、初めて一つの建設物を完成させることができます。発注する側と受注する側では立場や役割は異なりますが、より良いものをつくるという目的は同じです。だからこそ私たちは、協力会社の皆さまを共にものづくりを進める対等なパートナーであると考えています。奥村組は、施工管理を行う社員が現場に立ち、状況を自ら把握したうえで判断し、必要な指揮・監督を行う「現場密着型施工管理」を大切にしてきました。現場にいるからこそ、協力会社の皆さまが担う仕事の難しさや負荷を理解できます。そうした理解があれば、一方的に指示するのではなく、互いに意見を交わし、「一緒にやりましょう」という姿勢で仕事を進めることができます。工事に関わる全ての人が同じ方向を向き、より良いものをつくろうという思いを共有することが、安全と品質を高め、最終的にはお客さまからの信頼につながります。こうして築く協力会社やお客さまとの信頼関係こそが、当社の競争力の源泉であると考えています。私がよく社内で伝えるのは、「自分たちがされて嫌なことは、相手にしない」という、極めてシンプルな考え方です。こうした考え方は、私個人のものではありません。1907年の創業以来、「堅実経営」と「誠実施工」を信条としてきた奥村組のなかで、脈々と受け継がれてきた企業文化です。私自身も、入社後は現場で施工管理に従事しました。経験の浅い頃、協力会社の方への私の言葉遣いや話し方を上司から注意されたことがあります。その経験を通じて、現場で共に働く方々を尊重し、相手の立場に立って接することの大切さを学びました。振り返れば、私自身も奥村組の文化に育てられてきたのだと思います。この文化を日々の現場で実践し、協力会社の皆さまとの意見交換を重ねています。協力会社の皆さまが抱える課題にも耳を傾け、当社が支援できることは支援し、互いに力を必要とするときには支え合う。そうした関係を築いていきたいと考えています。
変化を先読みし、迅速に対応する
日本経済がデフレ基調からインフレ基調へ転換するなか、建設業を取り巻く事業環境も大きく変化しています。建設工事は、受注から完成まで長い期間を要します。当社のような元請企業が発注者から工事を受注するタイミングと、協力会社へ発注するタイミングが異なるうえ、着工時に全てを発注できるわけではありません。そのため、工事期間中の価格変動リスクを継続的に把握し、適切に管理することが、これまで以上に重要となっています。中東情勢の不安定化は、ディーゼル機器の燃料となる軽油に加え、ナフサ由来の建設資材の価格や調達にも影響します。こうした環境下では、当初の計画に固執せず、現場の状況に応じて臨機応変に対応しなければなりません。現場と本社・支社店が情報をすばやく共有し、調達先の複線化、発注者の理解を得たうえでの代替資材への切り替え、工程の早期調整など、安全、品質、工期を守るための判断を迅速に行っています。一方、事業環境の変化は新たな需要や事業機会も生み出しています。足元の建設需要は底堅く、建築分野では物流施設やデータセンター、工場など、土木分野では国土強靱化、防災・減災、社会インフラの更新に関する需要が見込まれます。ただし、こうした需要が将来にわたって同じ形で続くとは限りません。社会資本ストックの増加や将来の需要構造の変化を見据え、補修・更新・維持管理の技術を強化し、社会のニーズを的確に捉えて、新たな事業機会につなげていきます。
生産性向上と、ものづくりの達成感を両立する
2030年とその先を見据えると、AI、IT、自動化技術は、私たちの想像を超える速度で建設業に取り入れられていくでしょう。当社は「2030年に向けたビジョン」の実現を目指し、DXを経営戦略の一つに位置づけ、シールドトンネル工事における測量の無人化や、山岳トンネル工事におけるAIを活用した発破掘削の効率化など、現場社員の負担軽減と生産性向上につながる技術開発や業務改革を進めています。しかしながら、自動化や機械化が進んでも、ものづくりにおける人の重要性は変わりません。建設業の根底には、今もこれからも、現場社員と協力会社の皆さまが互いに意見を交わしながら共に工事を進める、「人がものづくりを支える」という本質があるからです。そして、その過程こそが、建設の仕事ならではの誇りや達成感の源泉であると私は考えています。私は趣味でマラソンに取り組み、これまでにフルマラソンを19回完走しました。そのなかで、50㎞や100㎞など、フルマラソンを超える距離を走るウルトラマラソンの経験者と話をする機会もありましたが、皆さんが口をそろえて言われたのは、「達成感の大きさは、その道のりの長さに比例する」という言葉です。長い道のりを一歩ずつ進み、困難を乗り越えた先に大きな達成感があります。これは建設の仕事にも通じます。一つの建設物を完成させるまでには、多くの人が知恵を出し、力を合わせ、さまざまな課題を乗り越えます。その過程でどれだけ思いを注ぎ込めるかが、仕事への誇りと完成したときの達成感につながります。AI、IT、自動化技術による省力化を進め、限られた時間のなかでより集中して働ける環境を整えることは不可欠です。大切なのは、テクノロジーによって人の負担を軽減しながらも、ものづくりを通じて得られる誇りや達成感を失わないことです。テクノロジーの進化と働く人々の「心」をいかに連動させていくか。そのための工夫を重ねていくことが、これからの人材マネジメントにおける重要な課題だと考えています。
本業の収益力を高め、中期経営計画を着実に推進する
当社グループは、「持続的な成長に向けた経営基盤の強化」をテーマとする「中期経営計画(2025~2027年度)」を推進しています。「企業価値の向上」「事業領域の拡大」「人的資源の活用」の3つの基本方針に沿って、「2030年に向けたビジョン」の実現に向けた力を蓄える期間と位置づけています。計画初年度の2026年3月期は、連結売上高3,072億円、連結営業利益159億円、親会社株主に帰属する当期純利益183億円となり、売上高と各段階利益は過去最高を更新しました。為替予約評価益などの一過性の要因が利益を押し上げた面はあるものの、土木・建築の両事業が堅調に推移し、追加・設計変更工事の獲得や原価低減などによって本業の採算が改善したことは、確かな前進と受け止めています。一方、売上高などの伸びには物価上昇の影響も含まれます。名目値だけで進捗を評価するのではなく、採算性と実質的な成長を慎重に見極めながら、中期経営計画の達成に取り組んでいきます。株主還元については、一過性の特殊要因による影響を除いた連結配当性向70%以上を、中期経営計画期間中の方針としています。成長投資、財務健全性、株主還元のバランスを取りながら、資本コストや株価を意識した経営を実践し、持続的な企業価値の向上につなげていきます。
土木・建築の強みを磨き、次の収益の柱を育てる
当社グループの特徴は、いわゆるゼネコンのなかでは、土木事業と建築事業の規模が比較的拮抗し、バランスの取れた事業基盤を形成していることです。社会インフラの整備・更新需要や民間設備投資需要を確実に取り込み、安全の徹底、品質・生産性の向上を通じて両事業の収益力と競争力を一層高めることが、当社グループの成長の土台です。その一方で、持続的な成長に向けて、再生可能エネルギー事業や新規事業を含む不動産事業等を、建設需要の変動に左右されにくい、土木・建築に続くもう一つの収益の柱へ育てたいと考えています。グループ全体の収益安定性を高めるとともに、脱炭素社会の実現や地域社会の持続的な発展にも貢献していきます。発電施設で発生した爆発事故により商業運転を停止していた連結子会社の石狩バイオエナジー合同会社では、復旧工事および再発防止に係る設備改造工事が完了し、2026年4月に商業運転を再開しました。不動産事業については、足元の投資利回りや市場環境を慎重に見極めながら、長期的な視点で優良な案件を積み上げ、安定収益の拡大を図ります。
一人ひとりの挑戦と多様な力を、未来の成長につなげる
持続的な成長には、人材の確保と育成が欠かせません。2026年7月には人財戦略部を新設し、新卒採用とキャリア採用の双方を強化するとともに、人材育成やキャリア形成支援を通じて、能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めます。加えて、奥村組の仕事の魅力や将来性を社外にも発信し、多様な人材の確保を図ります。私は、これからの企業経営において「健康」がますます重要なキーワードになると考えています。役職員一人ひとりが安心して働き続けるためには、心身の健康が欠かせません。健康であることは個人の幸福だけでなく、安全の徹底、品質・生産性の向上にもつながります。当社は健康経営を重要な経営課題と位置づけ、メンタルヘルス対策の充実や社内禁煙の推進などを通じて、心身ともに健やかに働き続けることができる職場環境づくりを進めています。2025年度から開始したエンゲージメントサーベイでは、経営側の想定とは異なる結果が表れることもありました。しかしながら、重要なのは結果の良し悪しだけを評価するのではなく、そこから職場や組織の課題に気づき、具体的な改善へつなげることです。一人ひとりが目指す姿や仕事に対する期待は異なります。そうした違いを理解し真摯に向き合うことで、より良い組織づくりにつなげていきます。多様性の確保も重要な経営課題です。建設業は従来、男性が多い業界でしたが、当社でも性別を特別に意識することなく仕事に取り組み、活躍する社員が増えています。女性管理職の登用をはじめ、性別や年齢などにかかわらず、多様な人材が力を発揮できる環境を整えていきます。また、新たな事業創出に向けて、2026年4月に社内起業制度を開始しました。所属や職種を問わず事業アイデアを募り、約70件の提案が寄せられました。建設事業の枠組みにとらわれない新たな収益機会の創出や既存事業の変革につながる可能性のある提案については、積極的に支援していきます。奥村組は、私が「石橋を叩いて、叩き過ぎて壊してしまう」と表現するほど、慎重さを重んじる会社です。この慎重さは、経営理念である「堅実経営」と「誠実施工」を守るうえで欠かせません。一方、変化の大きい時代には、新たな発想を形にする挑戦も必要です。変わらない信念を大切にしながら、変えるべきものは勇気を持って変えていく。その姿勢を貫き、一人ひとりの挑戦を未来の成長につなげていきます。
実効性あるガバナンスを追求する
当社は、経営の監督機能を強化するとともに、意思決定の迅速化を図るため、2016年に監査等委員会設置会社へ移行しました。社外取締役が取締役会の決議に一票を持って参画することで、質問や指摘が増え、議論が活性化したと実感しています。2026年6月の定時株主総会後は、取締役の女性比率が30%を超え、専門性や経験の面でも取締役会の多様化が進みました。こうした多様な知見を活かした率直な議論、適切な情報提供、執行状況の検証を通じて、監督機能と意思決定の質を高めるとともに、取締役会の実効性を継続的に検証し、改善を重ねていきます。
「いざ鎌倉」の精神を次の世代へ
建設業には災害が発生したとき、厳しい状況のなかでも安全を確保しながら、速やかに現地へ向かわなければならない場面があります。警察、消防、自衛隊などと連携しながら、被災した道路、鉄道、建築物などを実際に復旧させることは、建設業にしか担えない重要な役割です。阪神・淡路大震災や東日本大震災においても、当社は必要な組織を迅速に編成し、復旧・復興に尽力してきました。私は社内で、「いざ鎌倉」の気持ちを決して失ってはならないと伝えています。平時から技術と体制を整え、有事には社会のために直ちに動く。この使命感は、時代が変化しても継承しなければなりません。東日本大震災の経験や記録を次の世代へ伝える活動も、そのための取り組みです(【奥村組|東日本大震災伝承サイト】)。
社会に必要とされ続ける企業を目指して
建設業は、地球上で最も大きなものづくりを担う産業です。私たちがつくったものは社会に長く残り、多くの人の暮らしを支えます。だからこそ、私たちの仕事には大きな責任があり、それにふさわしい誇りがあります。私が目指すのは、役職員をはじめ、お客さま、協力会社、株主・投資家、地域社会など、当社に関わる全てのステークホルダーから信頼され、社会に必要とされ続ける企業です。そのために、私自身もステークホルダーとの対話を重ね、その声を経営に活かしていきます。奥村組には、「人を活かし、大切にする」企業文化があります。この文化のもと、建設事業の収益基盤をさらに強化するとともに、新たな事業領域を切り拓き、持続的な企業価値の向上を追求していきます。これからも皆さまの声に真摯に耳を傾け、期待に応えていきますので、引き続きご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

- 社長方針
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経営理念のもと、社会の持続的な発展に貢献するために、社会のニーズの変化を見据えた事業・サービスを展開するとともに、ESG/SDGs に関わる取り組みを一体的に推進し、確かな技術と誠実な事業運営により社会の信頼に応え、成長し続ける企業グループを目指し、次の活動を推進する。
- 1. コンプライアンスの面では、法令順守の徹底はもとより、企業行動規範のもと、企業倫理に則った公正かつ誠実な事業活動を推進する。
- 2. 安全衛生面では、進捗第一になりかねない施工を排し、「真の安全第一」を追求し、労働災害の撲滅を図るとともに、快適な職場環境を形成する。
- 3. 品質面では、「顧客満足」「社会的信頼」の向上を目指して品質管理を徹底するとともに、顧客のニーズに即した製品、技術、サービスを提供する。
- 4. 環境面では、「人と地球に優しい環境の創造と保全」を目指し、環境汚染の予防、環境負荷の低減および環境の保全に取り組む。
- 5. 労働環境面では、ウェルビーイングの実現を目指し、働き方改革の推進および心身の健康の保持増進を図る。
- 6. 統合マネジメントシステムの適確な運用ならびに継続的な改善により、事業活動にともなうリスクを管理し、機会につなげていくとともに、業務を効果的・効率的に遂行する。
全役職員は、この方針に基づき、自らの果たすべき職務あるいは責任に即した目標を設定し、主体性をもって達成に向けて取り組む。
2026年6月社長 奥村 太加典







