greenbar


東海・東南海・南海地震は連動発生の可能性が高い
写真:奥村
歴史が語る大地震の発生周期



奥村 関西地方は地震が少なく安定しているという意識があったようですが、それが1995年の阪神・淡路大震災で大きく変化しました。昨今の東南海地震等の話題、先日の震度5弱の地震によって、関西エリアの方々が再度地震に目を向けているように思いますが。

入倉 それは私もお話したかったことです。「関西は地震が起こらない」、確かにそれは事実でした。ただし「1995年の阪神・淡路大震災が起こるまでは」です。だから、超高層建築を設計する場合、「東京では地震動の最大速度を50カイン(cm/sec)に、関西はそれの80%でよい」という考えで耐震設計が一般的に行われていました。1990年頃、大阪で強震動の研究に関する建築系のシンポジウムにパネリストとして招かれたとき、「関西に東京と同じ指針なんて必要ないですよ」などと言われたりもしました。しかし、それは大きな間違いであり、もう少し長い時間スケールで考えるべきことだったのです。
「関西の地震は周期的」なのです。歴史書から紐解いても、関西が南海地震や東南海地震の周期と連動して地震活動が活発になったり静穏になったりする地域であることがはっきりしています。

奥村 どのような周期で地震が起こっているのですか?

入倉 日本にはしっかりとした文字文化があり、関西地域には古くは白鳳時代から地震の歴史が記されています。南海地震や東南海地震が起こると、その前40〜50年、その後10年ぐらいが非常に大きい地震活動、内陸の活断層に地震が起こる活動があるのです。そしてその後ピタッとやんでしまう。そして40〜50年間は静穏期となっています。歴史を見ると、その周期が容易に確認できます。
1946年に南海地震が起こっていますが、その直後の1948年に阪神・淡路大震災クラスの非常に大きな地震が福井で発生しています。福井地震は、広く言えば関西と捉えられますね。それ以降パタッとなくて静穏期に入ったのです。そして1995年に阪神・淡路大震災が起こった。つまり1946年から50年間ぐらいは静穏期であったと言えます。その後、2000年に鳥取県西部地震もありましたし、何かと騒がしくなっていますね。 歴史が語るように、地震活動の消長が周期的に繰り返されています。


奥村 そのお話しの流れでいけば、東海、東南海、南海地震はどうなのでしょうか?

入倉 歴史的に見ると、東海、東南海、南海地震は必ず一連の動きをしているのです。
南海地震は、たいてい東海・東南海に地震が起こった後に起こる。起こり方はいろいろですけれども、直後あるいは数年後に南海地震が起こっています。直近では1944年に東南海地震が発生し、2年後の1946年に南海地震が発生しています。その前は1854年の安政地震)、この時の東海・東南海地震は非常に大きな地震で、紀伊半島沖から駿河湾まで含んだ領域で起こり、その32時間後に南海地震が起こったのです。その前が1707年、日本の歴史で最大の地震と言われている宝永地震ですが、それは東海・東南海地震と南海地震が同時に起きたと考えられています。

奥村 東京では地震が頻繁にありますが、大地震とまではいかずとも、たびたび応力が開放されるほうが安全だと考えてよろしいのでしょうか?

入倉 そういうことになります。東京で地震が多い理由は、茨城県沖とか千葉県沖にあるプレート境界の地震活動によるものです。しかし、地震は大きくてもマグニチュード6程度です。小さい規模だから頻発するのです。
東京で起こるこれらの地震で引き起こされる震度4とか5の地震動は、耐震構造物にとってはあまり危険性がないのです。


資料:東南海沖を震源とした地震発生頻度



地震予知だけでは被害は防げない
写真:対談風景
地震の発生確率は産出されているが…



奥村 阪神・淡路大震災発生から、ひとつの区切りともいえる10年が近づいていますが、この震災の教訓などをお聞かせください。

入倉 地震の予知だけをやっていても被害は防げないことや、何日前とか何週間前といった精度の予知は、今の科学のレベルでは難しいことも分かりました。GPSによる地殻変動の研究が進歩し、地殻の動きや応力が集中している場所を特定できるようになってきていますが、それは地震の発生時期を特定しているわけではないのです。やはり事前にやるべきことは、地震動を予測して、それに耐える建物を造ろうということだと思います。

奥村 時間の単位でいうと、日、週、月、年がありますが、どの辺りまでが地震予知の範囲に入るのでしょうか。


入倉 現状からいうと、10年単位で分かるようになれば、予知が成功したと言ってもいいでしょう。
十勝沖地震というのは今後30年以内に60%の確率といわれ発生しました。ある意味予知ができたわけですね。しかし、宮城沖地震は今後30年以内に90%以上の発生確率と言われていますが起こっていません。あくまでも確率であり、数値は高くても「いつ」ということは言えないのです。「今後30年以内にどれくらいの確率」という表現をよく耳にすると思いますが、それは現時点において正確な表現といえるでしょう。
ちなみに海溝型地震では、西日本では100年周期ですが、東北では30年ないし50年の周期です。内陸地震はほとんど1,000年以上で、なかには10,000年以上という周期もあります。地震の発生周期が短いものは必然的に確率が高くなりますが、周期が長くなると確率の値は理論的に大きくならないことになります。


資料30年以内に大地震が起こる確率


 
前のページへ << | 1 | 2 | 3 | >> 次のページへ


copyright(c)OKUMURAGUMI 2004 all rights reserved.