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昨年11月号から始まった社長対談シリーズの第3回目は、地震学の権威である、京都大学副学長・入倉孝次郎理事をお招きし、強震動地震についてお話をお伺いしました。
◇10月14日(水)、京都市東山区蹴上にある「ウェスティン都ホテル京都」で開催。

■内陸地震より大きな
エネルギーを持つ海溝型地震
■歴史が語る大地震の発生周期
■地震の発生確率は算出されているが…
■東南海地震では長周期振動に注意
■免震および制振技術にさらに磨きを |
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氏名 入倉 孝次郎
(イリクラコウジロウ)
生年月日 昭和15年8月22日
現職 京都大学理事 副学長 |
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昭和38年3月 京都大学理学部物理学科卒業
昭和63年8月 京都大学防災研究所教授
平成13年5月 京都大学防災研究所所長
(平成15年4月まで)
平成16年4月 京都大学名誉教授
同 上 現職
□主な著書
「巨大地震の予知と防災」 創文社 1996 共著
「防災ハンドブック 京都大学防災研究所編」 朝倉書店 2001 分担
「地震災害論 防災学講座2 京都大学防災研究所編」 山海堂 2003 共著 |
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奥村 本日はどうぞよろしくお願いいたします。
さて、東海地震、東南海地震、また南海地震等の海溝型巨大地震の発生が危惧されていますが、「巨大地震」についてお聞かせください。
入倉 「巨大地震」とはマグニチュード8クラス以上のものを指します。あの阪神・淡路大震災でさえ、国際的な基準として用いられているモーメント・マグニチュードでいうと約7なので、「巨大地震」はそれよりもワンランク上です。また、マグニチュードが1つ違うと、エネルギーは約30倍違います。
2003年に発生した十勝沖地震はマグニチュード8で、巨大地震の一つですが、それよりもさらに大きな巨大地震はたくさんあって、その部類に入るのが東海、東南海、南海地震です。
奥村 活断層などによる内陸地震と比べ、海溝型のほうが巨大地震を引き起こす可能性が高いということでしょうか?
入倉 そうです。海溝型地震には2種類あります。1つは「プレート境界地震」と言われるものです。向かい合うプレートの一方が他方のプレートに沈み込み、2つのプレートの境界面に、ずれによる摩擦が発生する。2つの面の片方が動こうとすると、しばらくは追随して「ひずみ」がたまり、耐え切れなくなって跳ね上がる。これが古くから言われる「弾性反発説」ですが、かなり正確に地震の現象を表現しています。
これらはプレートの境界で起こるわけです。十勝沖地震がそうでしたし、予期されている南海・東南海地震もこのタイプのものと考えられています。
奥村 関西圏の人には記憶に新しい、本年9月に発生した「紀伊半島南東沖地震」も同じようなメカニズムで発生しているのでしょうか?
入倉 ところがそうではないのです。プレートには実際には厚み(本年9月の震源域では25kmぐらい)があって、その上面
と下面の間で起こったのが先日の地震と考えられています。建築の世界でも馴染みのある言葉ですが、プレートのことを「スラブ」とも呼んでおり、あの地震は「プレート内地震」または「スラブ内地震」などと言われるものです。 これが2つめのタイプの海溝型地震です。
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●プレートの沈み込みがもたらす地震
奥村 スラブの中の応力が高まってそれが開放されるときに地震が発生するわけですね。
入倉 はい。それがプレート境界地震とどういう関係にあるかというのはまだ解明されていませんが、「スラブ内地震」が起こってから、いわゆる「プレート境界地震」が起こる可能性が高いと説く研究者もいます。
また、「スラブ内地震」は一般に深いところに起こるので、応力が大きく、短周期の振動が強く生成されると考えられています。
スラブ内地震で有名なのは1993年の釧路沖地震ですが、深さ約100km地点で発生し、直上の地域が短周期の強い揺れで被害を受けました。しかし先日の地震は、スラブが比較的浅いところにある沖合いで発生したため、スラブ地震でも長周期の揺れが卓越してしまったのです。
つまり、これまでのスラブ内地震の概念とは少し違うということです。
場所によって揺れ方も多様性があるので、地震を安易に類型化してはいけないと、感じているのです。 |