株式会社奥村組と株式会社パスコは、山岳トンネル工事における施工情報を一元管理し、3次元データ作成の簡易性と快適な操作性を有するCIM用ソフトウェアを共同で開発し、実工事での運用を開始しました。
【開発の背景】
国土交通省は2012年度から、建設事業全体における事業効率のさらなる向上を図るべくCIM※1の導入を推進しています。
山岳トンネル工事へCIMを導入するにあたっては、基本となる3次元地盤モデルを作成し、同モデルにトンネル掘削や地山に関する各種計測データを連携させる必要があります。しかしながら、これらの作業には煩雑な3次元CADの操作などで多大な時間を必要とし、また、導入したCIMを円滑に運用するためには、その扱うデータ量の多さから高性能なパソコンが必要であるなど、現場への導入とその運用には高いハードルがありました。
【ソフトウェアの概要・特長】
本ソフトウェアは、大量データの高速処理と高いレスポンスに強みをもつパスコ保有の3次元基本ソフトウェア「PADMS」をベースとして、山岳トンネルCIM用にカスタマイズすることにより、データ作成の簡易性と快適な操作性を実現したもので、これにより現場のCIM導入、運用にかかる負荷を大幅に軽減させることができます。また本ソフトウェアは、CIM技術検討会※2トンネルWGで取り纏めた「CIMトンネルモデル作成ガイドライン」に準拠しています。その主な特長は以下のとおりです。
1) |
3次元地盤モデルを、3次元データ(基盤地図情報、トンネル線形情報)と2次元図面(地質平面図・地質縦断図の情報)を組み合わせた「準3次元地盤モデル」として作成することにより(図1)、同モデルの作成に要する時間を約1/10に低減。 |
2) |
日々の掘削管理に使用している他のシステム等で得られる切羽情報(切羽の写真・観察記録・地山評価点)、支保工パターン、切羽前方探査情報およびボーリングデータ等の情報を3次元地盤モデルデータに取り込むことで、山岳トンネル工事に関する情報の一元管理を実現(図2〜4)。 |
3) |
ベースとなる「PADMS」のパフォーマンスにより、現場で汎用されている32bitパソコンでも、3次元地盤モデル上で複数の情報が同時閲覧でき、動作遅延することなく画面の切り替え、拡大・縮小、視点変更等が可能。 |
【実工事への適用】
本ソフトウェアを中日本高速道路株式会社発注の中部横断自動車道森山トンネル工事ほか1件の工事に導入、運用しており、その有用性を確認しています。
【今後の展望】
奥村組とパスコは、今後も3次元データの活用ノウハウを高めるとともに、現場のニーズに適したシステムへの改良を共同で進め、山岳トンネル工事での積極的な活用はもとより、他の工種へも広く展開を図るなど、建設事業全体におけるCIMの導入を推進していきます。
※1 |
CIM(Construction Information Modeling/Management)
社会資本の計画・調査・設計段階から3次元モデルを導入し、その後の施工、維持管理の各段階においても活用し、一連の建設生産システムにおける受発注者双方の業務効率化・高度化を図るもの。 |
※2 |
CIM技術検討会
建設関係団体のメンバーで構成され、平成24年に発足した会。国土交通省のCIM 制度検討会と有機的に連携し、CIM の本格的な導入に向けて検討を進めており、平成28年度からはCIM制度検討会と統合し、「CIM導入推進委員会」として活動を継続している。 |
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