株式会社奥村組は、供用中の道路トンネル等を対象とした補修・補強工事にともなうコンクリート表面の削り取り作業において、粉じんの飛散を抑え、人力によらない高効率な作業を可能とした「天井用車載型乾式研掃装置」を開発し(特許出願済)、このたび首都高速道路株式会社発注のトンネル剥落防止対策工事への適用機会を得て、その有用性を実証しました。
【背景】
供用中の道路トンネル等における補修・補強工事は片側供用下で作業する場合が多く、一般通行車両への影響を最小限に抑えながら、限られた規制時間内で作業を完了させる必要があります。当該工事のうち、天井コンクリート表面の排気ガスによる汚れや旧塗膜、脆弱部を削り取る(表面処理)作業は、作業箇所を飛散防止材で囲った上で、ディスクサンダー等を用いて人力で行われてきました。しかしながら、排気ガス由来の有害な粉じん等が浮遊する中での作業となり、重たい動力工具を用いた上向姿勢での作業となることから、広範囲に及ぶコンクリート表面を処理するにあたって、作業環境および作業効率の改善が求められています。
【概要】
開発した「天井用車載型乾式研掃装置」は従来人力で行っていたトンネル天井面の表面処理作業を機械化したもので、作業環境の改善はもとより、作業の高効率化、仕上がり品質の向上に寄与します。
【特長】
本装置は表面処理を行うケレン機、ケレン機を前後左右に移動させる架台および架台を昇降させる多段式リフター等で構成されています(図1)。
ケレン機は鋼製ビットを配した円盤状の研掃ヘッドとその周囲に設けた飛散防止枠(ブラシとウレタンによる二重構造)からなり、前後に設置した2台のエアーシリンダーで天井面に押し付けながら研掃ヘッドを高速回転させて表面処理を行います。また、飛散防止枠内に発生する有害な粉じん等を集じん機で吸引して飛散を抑止します(写真1、2)。
処理能力は1サイクル当たり最大4.2u(2.7m×1.56m)であり、本装置を車積型とすることで、設置・移設時間の短縮が図れ、連続的な作業を可能にしました。
【実工事への適用】
首都高速道路株式会社発注のトンネル剥落防止対策工事の一部区間において本装置を試験的に適用したところ、従来の人力作業と比べて作業効率の改善が確認できました。また、品質面ではコンクリート表面の排気ガスによる汚れや旧塗膜の取り残しがなく、削り取り面の仕上がり状況にバラツキがなくなったことから、補修材との付着強度が約2倍に向上しました。さらに、環境面では作業時に発生する粉塵等の飛散が抑止されたことで、作業環境が大幅に改善されました(写真3、4)。
【今後の展望】
本装置をコンクリート構造物の補修・補強工事において作業環境の改善および高効率化に寄与する施工技術として、今後は既に実用化している「超高圧水噴射(ウォータージェット)によるコンクリート表面処理機」とあわせて発注者に積極的に提案していきます。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
技術研究所 土木研究課
石井
Tel .029-865-1719 |
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写真4 表面処理面の比較とケレン機の1サイクルの軌跡
(左:人力施工 右:本装置による施工)
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