株式会社奥村組、株式会社日本海水および株式会社ナゴヤ大島機械は、油分や揮発性有機化合物(VOC)を含む汚染水を高効率で浄化する技術を共同開発し、このたび地下水汚染の対策工事および廃油処理作業への適用機会を得て、高い浄化性能を実証しました。
【背景】
貯油施設等を有する事業場や工場の敷地あるいは跡地において、土壌汚染対策法および水質汚濁防止法に基づく調査で油分やVOCによる土壌や地下水の汚染が確認された場合、汚染の拡散防止のために、土壌の掘削除去や地下水の揚水処理といった対策が必要になります。これらの対策過程で発生した汚染水を処理する方法としては、有害物質が主に油分の場合は産業廃棄物として中間処理場で処分、VOCの場合は活性炭吸着処理や酸化分解処理による排水可能なレベルまでの水質浄化が一般的となりますが、産業廃棄物処分はコストが高く、活性炭吸着処理や酸化分解処理についても、処理日数が長期に及ぶうえ、処理過程で産業廃棄物が生じるなど、コストの面で課題がありました。
【技術の概要】
本技術は、油分やVOCの分解に必要な酸化力の大きいオゾンに着目し、これを微細気泡(マイクロバブル)化することで、反応性の高い水酸基(OHラジカル)を大量に発生、酸化力を飛躍的に向上させることにより、油分やVOCを効率よく浄化するものです。浄化装置は、オゾン発生装置、マイクロバブル発生器および反応槽等から構成されており、省スペースで処理できるコンパクトなサイズとなっています(写真1、図1)。
コスト試算では、油分を対象とした産業廃棄物処分と比べて、約75%のコスト低減が図れます。VOCを対象とした活性炭吸着処理と比べても、浄化処理に要する日数を大幅に短縮できるうえ、処理過程で産業廃棄物が生じないため、ベンゼン・エチレン系VOCの場合で、50%以上のコスト低減が図れます。また、これまで酸化分解処理が困難とされてきた重油、潤滑油、エタン系VOC等を含む汚染水でも浄化可能になりました。
【浄化性能】 |
事例@ |
概 要 |
: |
工場敷地内における軽油およびA重油含有地下水の浄化処理 |
|
原 水 |
: |
油分濃度1,300mg/L(ノルマルヘキサン抽出物質)の着色汚水 |
|
処理結果 |
: |
500L当たり処理時間60分で下水道排水基準値※未満の着色なし(写真2) |
|
|
|
|
事例A |
概 要 |
: |
工場敷地内におけるC重油タンクスラッジ洗浄水の浄化処理 |
|
原 水 |
: |
油分濃度130mg/L(ノルマルヘキサン抽出物質)の着色汚水 |
|
処理結果 |
: |
500L当たり処理時間10分で下水道排水基準値※未満の着色なし(写真3) |
|
|
|
|
事例B |
概 要 |
: |
ベンゼン・エチレン系VOCの浄化試験 |
|
原 水 |
: |
VOC濃度 地下水環境基準値※の数倍〜10数倍 |
|
処理結果 |
: |
60L当たり処理時間3分で地下水環境基準値※未満 |
|
|
|
|
事例C |
概 要 |
: |
エタン系VOCの浄化試験 |
|
原 水 |
: |
VOC濃度 地下水環境基準値※の数倍〜20倍 |
|
処理結果 |
: |
30L当たり、トリクロロエタンは処理時間10〜30分で地下水環境基準値※未満、ジクロロエタンは処理時間40分で下水道排水基準値※未満 |
※有害物質に関わる排水基準値については、下水道法による下水道排水基準や環境省告示による地下水環境基準などで定められている。
【今後の展望】
本技術は、油分やVOCを含む汚染水を「短期間・低コスト・省スペース」で浄化可能な環境修復技術であり、当社保有の「微生物を用いた油分含有汚染土壌の浄化技術」とパッケージにすることにより、今後は地下水を含めた土壌全体の浄化技術として、積極的に提案していく所存です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
土木本部 土木統括部 環境技術室
小河
Tel .06-6625-3764 |
|