株式会社奥村組は、上下水道施設の補修・補強工事など広範囲に及ぶ柱や壁のコンクリート表面の削り取り作業において、高速で処理が可能な「柱・壁用コンクリート表面高速処理機」を開発し、このたび上水道配水池の改修工事への適用機会を得て、その高い施工性能を実証しました。
【背 景】
コンクリート構造物の補修・補強工事等にともなうコンクリート表面の旧塗膜や劣化範囲を削り取る作業（表面処理作業）は、主にハンドガンタイプの超高圧水噴射（ウォータージェット）装置を用いた人力による施工であるため、広範囲に及ぶ柱や壁を処理するには作業効率が悪いうえ、仕上がり面における品質（旧塗膜の除去具合および凹凸の程度など）のバラツキも懸念されていました。
【概 要】
今回開発した「柱・壁用コンクリート表面高速処理機」は、従来人力で行ってきた表面処理作業を機械化したもので、本機を使用することにより、大幅な作業の高速化・省力化、さらには仕上がり品質の均一化と作業環境の改善（ミストや粉塵飛散の抑止、高所作業の低減）も図ることができるようになりました。
１．高速処理機の構造
本機は、表面処理を行うウォータージェット装置、それを上下・左右・前後にスライドさせることができる鋼製ガイド、旋回および自走が可能な電動式のクローラ型ベースマシンから構成されています。（図−１）。
ウォータージェット装置については、ノズルを取り付けた回転式噴射装置を2基配置し、それぞれ長さが異なる4本のノズルを回転させながら超高圧水を噴射するため、コンクリートの表面を満遍なく処理することができます。また、装置全体を二重にブラシが付いた鋼製カバーで覆い、側面に4ヵ所の吸引口を設けたことで、ミストや粉塵などの飛散を抑止します（写真−１）。
２．表面処理作業の施工手順
本機は、1サイクルで最大幅1.8ｍ×高さ6.5mの範囲を自動で表面処理することができます。本機を所定の位置に移動させた後、遠隔操作によって処理範囲を指示すると、ウォータージェット装置はエアーシリンダーにより一定の圧力で壁・柱の表面に押し付けられ、超高圧水を噴射しながら一定速度でスライドし、表面処理を行います。指示範囲の処理が完了したら、本機を次の施工位置に移動させ、新たに処理範囲を指示し、自動運転を開始します。
【実工事への適用】
これまで2件の上水道配水池改修工事において、耐震補強を目的とした柱と壁の増厚、および耐震壁の増設等にともなうコンクリートの表面処理作業に本機を適用しました（写真−２〜４）。
性能確認試験および実施工の結果、本機の処理能力（1日当たりの施工面積）は従来のハンドガンを用いた人力による施工と比べ、塗膜除去作業では約1.4倍、コンクリート劣化範囲の除去作業では約2.0倍に向上したことが確認されました。さらに、コンクリート表面における凹凸の程度が均一になったことで、仕上がり面の品質のバラツキも改善され、後打ちコンクリートとの付着強度も従来工法の約1.2倍に向上しました。また、作業時においては、ミストや粉塵などの飛散抑止機能により、大幅な作業環境の改善も図れました。
今後も、広範囲に及ぶコンクリート構造物の補強・補修工事における高速施工技術として、本技術を積極的に発注者に提案していきます。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
技術研究所 土木研究課
石井
Tel .029-865-1719 |
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図−１ 壁･柱用コンクリート表面処理機のイメージ
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写真−１ 飛散抑止機構付きＷＪ装置 |
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