株式会社奥村組は、電気化学工業株式会社発注の新潟県糸魚川市青海工場内の作業坑掘削(山岳トンネル)工事において、長孔発破の試験施工を行い、掘削性能と発破振動の低減効果を確認しました。
近年、山岳トンネルの施工では、安定した硬い岩盤から成るAあるいはB等級相当の地山において、急速施工によるコストダウンを目的とした長孔発破が採用され、一掘進長(一回の発破による掘進長)の延伸が試みられています。
今回、奥村組は、B等級よりも1〜2ランク条件の悪い地山における長孔発破の適用に目処をつけたことに加え、爆薬と雷管の種類および発破段数を工夫することで「発破振動の増大」や「ずりの大粒径化」といった長孔発破の課題を解消できることを確認しました。
【試験施工の概要】
試験施工では、地質は、後期古生代のCH・CM等級の石灰岩であり、変形係数が55GPa、強度が77MPa(ともに平均値)と非常に硬い反面、地山には風化を受けて開口した亀裂や溶出で生じたと思われる空洞が認められましたが、環境への影響や安全面を考慮したうえで長孔発破を適用し、一掘進長4.0m(当現場における通常発破:1.5m)を達成しました(写真−1)。なお、掘削幅7.7m(断面積45.3u)に対する一掘進長の比率は52%になり、これは近年国内で記録されている長孔発破の実績とほぼ同程度の値となっています。
今回の発破では、通常、踏まえ部分の発破に用いるエマルジョン系含水爆薬を心抜きや払い部分にも使用し、上半アーチの外周にはスムースブラスティング※を採用しました。また、電気雷管に比べ秒時誤差の小さい導火管付き雷管を使用することにより、発破段数を10段から27段に増加させました。
【試験施工で得られた成果】
<発破振動の低減>
長孔発破では、通常発破に比べて一段あたりの薬量が増加します。今回の試験施工においては、一段あたりの薬量が通常発破の約5倍となり、しかも通常用いるANFO爆薬より爆速が大きいエマルジョン系含水爆薬を使用しましたが、切羽から50m、100m、200mの3箇所において発破時の最大振動速度を測定した結果、50〜60%に低減されることを確認しました(図−1)。
<ずりサイズの小型化>
長孔発破では、ずりのサイズが大きくなり、搬出の支障になることもありますが、今回の試験施工において、写真−2、図−2に示すように半数以上のずりが10cm以下に破砕されたことから、ベルトコンベヤで搬出する際にもクラッシャーへの投入前にずりを小割りするといった手間が減るため、搬出の効率化が図れ、サイクルタイムの短縮に繋がります。
<余掘り量の低減>
発破後の外周面には、写真−3のように穿孔時のノミ跡が全て残っていることから、余掘りすることなく計画通りに掘削できており、一掘進長が4.0mになってもスムースブラスティング※の効果を維持できることを確認しました。
※スムースブラスティング
最外周部の発破に際し、孔の間隔を小さくするとともに装薬量をコントロールすることで、外周に沿った亀裂を発生させ、発破精度の向上および地山の損傷を軽減すること |
【今後の方針】
今回の長孔発破の試験施工では、爆薬と雷管の種類以外にも、その充填密度および装薬パターンの組み合わせが、さらなる掘削効率の向上、発破振動の低減に繋がったと考えていますが、今後はこれらのメカニズムの詳細な分析とともに、適用範囲の拡大ならびに実施工におけるサイクルタイムの短縮等についても、検討を進める予定です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組 技術研究所
浅野
Tel .029-865-1676 |
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写真−1 発破後の掘削外周面状況(側壁部) |
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図−1 最大振動速度(長孔発破と通常発破) |
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写真−2 発破直後のずりの状況 |
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図−2 ずりの粒度分布 |
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写真−3 発破後の掘削外周面状況(アーチ部) |
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