株式会社奥村組は、先に開発したダム湖堆積泥土脱水処理用「奥村式スラリー連続脱水システム」を、泥水式シールド工法の二次処理設備に適用場面を拡大し、大阪府東部流域下水道事務所発注の「寝屋川流域下水道 飛行場南増補幹線(第3工区)下水道管渠築造工事(大阪府八尾市)」に採用しました。
泥水シールドの二次処理土は、余剰泥水を脱水処理することにより減容化し、汚泥として処分しています。しかし、建設汚泥の再資源化率は48%1)とコンクリート塊(98%)や木材(68%)に比べて低く、汚泥の最終処分量が建設廃棄物全体の32%を占めている現状から、再生利用が喫緊の課題となっています。「奥村式スラリー連続脱水システム」は建設汚泥の「減容化」と「再生利用」を促進できる、社会の要請に応える技術です。
「奥村式スラリー連続脱水システム」は、泥水二次処理設備として通常用いるフィルタープレス機と比較して、@設置スペースの縮小化、A連続処理による省力化・低コスト化、B脱水処理土の品質向上・減容化が図れる「スクリュープレス機(横型・縦型)」を使用します。
「奥村式スラリー連続脱水システム」の特長は以下のとおりです。
@ 当工事に採用した横型スクリュープレス機を用いた脱水設備面積は70uであり、同規模のフィルタープレス機と比較して12%狭い面積で設置できます。さらに、縦型とすることで立坑などの上下空間を有効に活用して17%の省面積化が実現できるため、基地用地の省スペース化に適しています。
A スクリュープレス機は連続脱水機構であることから、開枠時に「ろ布」の清掃等のメンテナンスが必要なフィルタープレスと比較して、運転員の省力化が可能です。また、使用電力量もフィルタープレスに比べ、スラリーの処理量当り45%低減できます。
B フィルタープレスと比較して処理土の含水比を最大12%低減できるため、脱水ケーキで4%減容化できます。減容化に伴い、二次処理土の積込、運搬、処分費が低減でき、約9%のコストダウンを実現します。
C 使用電力と搬出ダンプ台数の低減により、同規模のフィルタープレス機を使用した場合と比較して二酸化炭素排出量を約7%削減できます。
D スクリュープレス機に付加した「強度自動制御システム」により、スクリュー回転数を調整することで処理土の含水比を任意に調整できます。したがって、余剰泥水の品質が変動しても、要求される強度(コーン指数)および含水比の処理土を排出します。
E さらに凝集助材の変更により、第3種処理土2)(コーン指数400kN/u以上)まで高強度化が図れるとともに、再生利用制度3)を活用すれば他工事の埋め戻し材として利用できます。
F スクリュープレス機は回転が低速であり処理土が粒状で連続的に排出されるので、処理ケーキが一度に落下することがなく、フィルタープレス機と比較して、騒音・振動を著しく低減させることができます。
本システムを採用した「寝屋川流域下水道 飛行場南増補幹線(第3工区)下水管渠築造工事」の公開見学会を6月に3回開催しました。17日は発注者である大阪府関係者、24日は設計事務所、25日は国交省をはじめとした発注機関を対象に、合計54名が参加されました。スクリュープレス機の特長やコスト、汚泥の凝集方法等多岐にわたる活発な質問をいただき、関心の高さをあらためて認識いたしました。
「奥村式スラリー連続脱水システム」は、ダム湖堆積土の脱水処理を目的として開発を開始した技術ですが、ダム湖堆積土だけでなく、シールド工事で発生する微粒分を多く含んだスラリー材料の処理にも適していることが実証できました。今後は、それらの工事や河川・湖沼・ため池等の堆積泥土処理に普及展開し、処理土の再生利用の向上に努めてまいります。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
技術本部 関西土木技術部
中村
Tel .
06-6625-3806
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【参考】
1)国土交通省 平成17年度データ
2)建設汚泥の再生利用に関するガイドライン(国土交通省)
3)建設汚泥の再生利用制度:泥土リサイクル協会のHPより |
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(1)個別指定制度 (1)個別指定制度 |
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再生利用の個別指定制度とは,指定を受けようとする者が都道府県知事等に申請し,都道府県知事等が審査の結果,必要かつ適当と判断した場合に「再生利用業者」として指定するものです。指定を受けた者は,産業廃棄物処理業の許可が不要となります。
ただし,廃棄物処理法の処理基準が適用され,また再資源化施設は廃棄物中間処理施設の設置許可が必要であるなど,廃棄物処理法の規制の適用が除外されるものではありません。 |
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(2)再生利用認定制度(大臣認定制度) |
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再生利用認定制度(大臣認定制度)とは,再生利用者(発生工事元請施行者,中間処理業者または利用工事元請施行者)が環境大臣に申請し,環境大臣が環境省令(施行規則),告示に定められた基準に従い審査し,基準に適合している場合に認定するものです。認定を受けた者は,許可を受けずに廃棄物の収集運搬,処分(処理行為)を業として行うことができ,また当該廃棄物処理施設を設置することができます。
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図1
泥水シールド全体処理フローシート
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一次処理:トンネルの掘削で発生した土砂のうち比較的粒径の大きいものを分級回収する工程
二次処理:一次処理で残った粒径の小さい泥分を回収する工程
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図2
一次処理と二次処理
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図3
脱水処理システム処理フロー(横型スクリュープレス)
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図4
脱水処理システム処理フロー(縦型スクリュープレス)
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写真1
脱水処理設備(横型スクリュープレスを二次処理土排出側から撮影)
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写真2
横型スクリュープレス
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写真3
スクリュープレスから排出される堆積土(上から撮影)
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写真4
縦型スクリュープレス
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写真5
見学会の模様
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写真6
見学会の模様
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写真7
見学会の模様
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