株式会社奥村組は、軌道直下の鋼製桁上フランジに対して、短時間で重防食塗装を行う工法を開発し、実橋梁に適用しました。
【背景】
現在、鉄道鋼製橋梁では架設後80年以上経過したものが多く、土木構造物の長寿命化やライフサイクルコストの低減が注目されるなか、効率的かつ効果的な維持メンテナンス手法が求められています。
これらの鋼製橋梁では、塗装によるメンテナンスが定期的に行われています。しかし、直接枕木が設置されている鋼製桁上フランジ部分に関しては、線路閉鎖時間内である夜間の作業となることや、塗装後すぐ、塗膜に列車荷重が加わることなどの問題があり、効果的なメンテナンス手法がなく、他部位に比べ、腐食の進行に対する注意が必要でした。
このような理由から、非常に限られた時間内に、耐久性の高い防食を可能とする工法が求められていました。
【工法の概要】
「鋼製桁上フランジ ライニングシステム」は、奥村組と阪急電鉄が共同開発したもので、鋼製桁上フランジに、専用のライニング装置を用いてウレア系樹脂を塗装する技術です。
専用のライニング装置は、硬化速度の速い樹脂を上フランジ幅全体に一定量供給する専用ノズルを搭載しており、一定速度で走行することによって、高品質で均一な塗膜を短時間で形成します。さらに、非常にコンパクトな構造としたことによって、狭隘な箇所での施工も可能です(図1)。
ウレア系樹脂は、防水性能や耐摩耗性能に優れる材料であると同時に、硬化時間が約1分程度と速いため、施工後すぐに供用できます。
当システムによるライニングの手順は、以下の通りです。
@ 線路閉鎖後、橋梁部の枕木とレールを同時に持ち上げる(写真1)。
A ライニング面の下地処理(ケレン)を行う。
B 桁と枕木とに設けられた約30cmの隙間にライニング装置を設置する。
C 鋼製桁上フランジ上において、専用ノズルからウレア系樹脂を吐出させながら、ライニング装置を走行させることにより、ライニングする(写真2、写真3)。
D ライニング後、約5分間静置して枕木とレールを降下させる。
阪急電鉄鰍フ実橋梁にて本システムを用いた試験施工を行い、桁長約13mの鋼製上路桁I型鋼(I-300×1500)2条を、線路閉鎖時間内の約3時間でライニングできることを確認しました。
【工法の特長】
@ 枕木とレールを締結したまま持ち上げ、枕木と上フランジ間に30cm程度の隙間を確保するだけで作業できるので、短時間で施工できる。
A 速度制御が可能なライニング装置と、桁幅に応じた専用ノズルを用いて樹脂を吐出しライニングするため、均一な膜厚が形成可能。(標準膜厚t=2.0mm)
B ライニング材として速硬化性のウレア系樹脂を用いるため、ライニング後すぐに枕木およびレールを復旧し供用できる。
C ウレア系樹脂は鋼製桁の劣化因子となる水分及び酸素を遮断するため、腐食を大幅に抑制できる。
D 本システムを適用することで塗装面のメンテナンス(塗り替え)が約30年程度に1回程度となり、ライフサイクルコストを低減できる。
今後奥村組は、関係各社の指導、協力を仰ぎながら、鋼製桁を対象にした事後保全だけでなく、予防保全も含めた技術提案を積極的に図っていきます。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
関西支社環境プロジェクト部
中野
Tel .06-6625-3941
株式会社奥村組
技術本部環境プロジェクト部
西山 Tel .03-5427-8517
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図1 鋼製桁上フランジ ライニングシステム |
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写真1 レール・枕木扛上状況 |
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写真2 ノズルから吐出するウレア系樹脂 |
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写真3 ライニング状況
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写真4 ライニング完了
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