単孔連続式スロット削孔技術「スロットワン」を実用化
〜トンネル工事の発破振動や騒音を低減〜

株式会社奥村組は、効率的な岩盤破砕工法であるＳＤ工法（Slot Drilling Method）に用いる単孔連続式スロット削孔技術「スロットワン」を新たに開発し、道路トンネルでの実証工事で実用性を確認しました。
「スロットワン」は、汎用のドリルに直径100�oの親子ビットを装着し、ロッドと並行に取り付けたガイドを既設孔に挿入した状態で隣接孔をラップさせて穿孔することで連続したスロットを簡単に効率よく形成する技術です。
これによって、ＳＤ工法の適用場面が広がるとともに、コストダウンが図れます。
　
ＳＤ工法は、奥村組が他社に先駆けて1983年に開発した効率的な岩盤破砕工法で、スロット削孔機（以下「ＳＤ機」）を用いてトンネル外周や掘削面にスロット状の自由面を設けることにより、山岳トンネル施工時の振動・騒音の影響を周辺に及ぼすことなく掘削するものです。
奥村組は、本州四国連絡道路舞子トンネルをはじめ、都市域に近接した山岳トンネルの低振動掘削やコンクリート構造物の解体など、40数件にＳＤ工法を適用し、割岩や破砕工法の技術分野ではトップの実績を有しています。これまでに、４連式のＳＤ�V型機や2連式のスロットスターなどのＳＤ機を実用化し、実工事に採用してきました。今回、さらなる低コスト化と適用領域拡大のため、単孔連続式スロット削孔技術「スロットワン」を新たに開発しました。

１．「スロットワン」の特長
スロットワンは、シンプルな構造で精度のよい連続穿孔を施工するために以下の工夫を施しています（図−１　施工手順、図−２　を参照）。
�@ 精度の良いスロット
ビットは先端が凸形状の親子ビット（親ビットφ100�o、子ビットφ45�o）で、子ビットがパイロット（案内先棒）として穿孔します。そのため、穿孔端面は凹の形状となり、親ビットの横ズレによる孔曲がりを防止します。さらに、ロッドは通常の六角形32�oではなく、円形38�oを採用したことで、ロッドの剛性が大きくなり、直線で精度の良い穿孔ができます。
�A 連続性の良いスロット
ロッドと平行に取り付けたガイドを既設孔に挿入し、ロッドの一部を既設孔と重ねて新たな穿孔を行うことによって、連続したスロットを形成します。

２．これまでのＳＤ機と比較した特長
これまでのＳＤ機は、4連式または2連式の専用の多連ドリルを用いて連続性に優れたスロットを形成する方式でしたが、「スロットワン」は、汎用ドリルに親子ビットとガイドを装着する簡単な構造でスロットを形成することから、以下の特長があります。
�@ 構造が簡単で、部品数が少ないため、トンネル掘削工の直接工事費で約20％のコスト縮減（2連式ＳＤ機と比べて）が図れる
�A 汎用ドリルに簡単に装着して使用できるため、急に硬岩が出現した場合にも容易にＳＤ工法を採用できる
�B 小断面トンネルや立坑、小規模なＳＤ工事にも手軽に採用できる
�C 従来と同様、ガイドはボルト固定式でビットの左右どちらにでも容易に取付可能であるため、削孔に死角が少なくハンドリング性に優れる

今後は、発破振動や騒音の低減が要請される山岳トンネル工事において、ＳＤ工法の新たなるメニューとして「スロットワン」を積極的に採用していきます。また、トンネル工事にとどまらず、振動や粉塵を低減しなければならない機械基礎やダム堤体等のコンクリ−ト構造物の撤去や更新技術として民間工事への提案も積極的に推進します。

以　上

【お問い合わせ先】 　　株式会社奥村組 　　技術本部東京土木技術部 　　   古賀 　 　　Tel . 03-5427-8468

図−１　スロットワンの施工手順

【施工手順】 �@　ガイドを既設孔に挿入して穿孔を開始します。 �A　親子ビットのロッドを送りながら、穿孔を進めます。この工程で発生する繰り粉（スライム）は既設孔から排出されます。 �B　既設孔の孔尻と同じ深さまで穿孔して、ビットとガイドを引抜きます。 �@〜�Bを繰り返して連続したスロットを造ります。

図−２　ガイドと親子ビットの構造

写真−１　ガイドと親子ビットのドリルジャンボへの装着状況