株式会社奥村組は、建設工事で発生する「騒音」、「振動」、「粉塵」について、環境影響評価の観点から、その三項目を総合的に定量評価できる解析システムを構築しました。
当解析システムは評価対象とする建設現場周辺の複雑な条件を反映したCADデータを取り込み、環境影響評価を実施します。建設工事から発生する騒音、振動、粉塵の周辺への影響を定量的に評価するためには、
@騒音、振動、粉塵の三項目それぞれについて、高度な数値解析の適用が必要である。
A高度な数値解析にあたり、条件設定が煩雑であり、データ入力にも時間を要する。
B現地への適用は、現場測定データを基にして、解析精度の向上過程が必要である。
などの問題があり、各建設現場で適用することは困難でした。
今回構築したシステムは、騒音、振動、粉塵の解析に必要な地形データを共有することによって、解析作業の効率を飛躍的に向上させるとともに、三項目を統合した精度の高い評価を可能としたものです。
建設工事において、周辺環境への配慮はこれまで以上に重要視されています。周辺環境は「周辺住民の生活に関わる環境」と「地盤や地下水といった構造物に関わる環境」に大別されますが、「周辺住民の生活に関わる環境」においては、
@建設機械のエンジン音や打撃などの作業で発生する騒音
A発破や杭打ち、破砕などの作業で発生する振動
B地盤の掘削や整地作業、ダンプトラックの通行などで発生する粉塵
が特に問題となっています。
その問題に対処するため、工事着手前に影響度合いを定量的に評価し、複数の対策効果を比較検討することで、適切な対策を選定する必要があります。対策効果までを考慮した環境影響評価は、解析条件が複雑であり、高度な数値解析を用いざるを得ません。また、数値解析ソフトは、騒音、振動、粉塵の項目別に開発されているため、入力データの作成方法もそれぞれに異なっており、同じ検討対象の現場であっても、別々の入力データを作成する必要がありました。
今回、開発した解析システムは
1)CADソフトを利用して現場の地形データを作成し、三項目の解析を共通のデータで効率的に行える。
2)地形や構造物など現地固有の条件が評価でき、現地の実情に適合したきめ細かな対策が実施できる。
3)騒音、振動、粉塵という建設現場の環境課題全てについて定量的な評価をもとにした対策を実施できる。
4)工事の影響や対策についてビジュアルに表現でき、地元関係者に対して効果が説明しやすくなる。
5)解析の実施機会が飛躍的に増大することで、現場測定との照合による精度向上が見込まれ、周辺環境に最適な対策が選定できる。
といった特長があります。
奥村組では、周辺住民の生活環境への影響を最小限に抑えるため、各建設現場の施工計画に、当解析システムを用いた環境アセスメント手法を活用していきます。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
技術本部東京土木技術部
基盤技術グループ
森田 Tel . 03-5427-8576
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「丘陵地での高速道路工事」についての環境影響評価事例 |
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図−1 騒音レベルの解析 |
バックホウの掘削作業、ブレーカの破砕作業に関する騒音解析
重機が民家に最も近づく位置での工事騒音について影響を検討した例。騒音対策としての防音壁を最適な場所に設置することで、民家における騒音が70dB以下に抑制できることを確認してから工事計画を立案する。 |
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図−2 振動レベルの解析
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図1と同じバックホウの掘削作業、ブレーカの破砕作業に関する騒音解析。
重機が民家に最も近づく位置での工事振動の影響検討。この例では、民家の位置における振動は極めて小さく、振動対策の必要がないことを確認した。解析ソフトは振動遮断壁を設置することによる効果の検討が可能である。共有した地形のCADデータは解析ツールに合わせて解析モデルを変換しているため、出力図は振動の場合とやや異なる。 |
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図−3
粉塵濃度の解析
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工事用道路を走行するダンプカーで巻き上がる粉塵解析。
凡例の色は道路上の粉塵発生位置に対する濃度比のコンターを表示している。
一般的な粉塵の抑制対策である散水による効果を様々な風向・風速について検討する。散水のみで粉塵が低減できない場合には防塵ネットなどを設置したときの評価を行う。騒音・振動と同じCADデータを共有し、解析ツールに合わせて解析モデルを変換している。
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