株式会社奥村組、日立造船株式会社、新日本製鐵株式會社の3社は、先に新聞発表(平成17年12月20日付)した道路トンネルの新しい分岐合流部の接合工法である『CV拡幅工法を用いた分岐合流部の地中接合工法』の実用性を高めました。
このほど、CV拡幅工法の特長であるシールド機の連続可変拡幅テールシール部の実規模公開実証試験を日立造船叶_奈川工場で行い、拡幅・縮幅の作動、0.5MPaまでの耐水性などを確認し、良好な結果を得ることができました。
◇『CV拡幅工法を用いた分岐合流部の地中接合工法』の概要(「参考資料」参照)
『CV拡幅工法を用いた分岐合流部の地中接合工法』は、先行構築された本線トンネルを拡幅シールド機(CV拡幅シールド機)で直接切削することによりランプ部の分岐合流部の接合を行う技術です。
CV拡幅工法とは、地中でシールド機が標準断面から拡幅側に連続的に傾斜拡幅し、所定の拡幅断面形状で必要な長さを掘進した後、連続的に傾斜縮幅して再び標準断面に戻る機構で、シールド機のスキンプレートを斜めに拡幅・縮幅できるため、余掘り量を最小限に抑えることができ、地山の安定に優れています(図−1参照)。また、同工法は、道路トンネルのランプ合流部のみならず、道路トンネルの非常駐車帯、曲線部の視距拡幅部、共同溝の分岐部、電力洞道のケーブル接続部および地下鉄のプラットホームなどへの適用が可能です。
◇CV拡幅シールド機の『連続可変拡幅テールシール部』の構造
連続的な断面変化へのテールシール構造の対応能力が、CV拡幅シールド機の最も大きな課題です。同シールド機に使用するテールシール構造は「断面の幅方向の変化に伴う伸縮」をはじめ、「傾斜角度」「本体のたわみ、ねじれ」等に対応する必要があります(図−2参照)。
そこで今回、スライドバーを使用した構造の拡幅テールシールを開発しました。
シールド機の上下の平坦部に伸縮可能なスライドバーを設置し、その両側に固定テールシールを連続的に配置することで、セグメントとの止水を行う構造です。連続傾斜拡幅時には、固定胴部と傾斜拡幅胴部に角度(4度〜5度)がつくため、スライドバーをシールド機本体から支持ピンで吊下げることによって、平行の動き以外にも対応できる構造となっています(図−3参照)。
また、「固定胴側テールシール」「拡幅胴側テールシール」および「スライドバーテールシール」で構成されている各テールシールの重なり部に、各々ラップシールを配置することによって、止水性を確保する構造となっています(写真−1参照)。
◇『連続可変拡幅テールシール部』の実証実験
日立造船叶_奈川工場においてCV拡幅シールド機の拡幅テールシール構造の実証を目的とした実規模実験を行いました(写真−2参照)。
実験装置は、実機で用いるテールシールを2段設置し(泥水室、パテグリス室、大気室の3室に分割)、泥水圧を昇圧することによって、耐水圧を確認できる構造としました。また、パテグリスを適宜打ち込む(充填)とともに、実際の拡幅、縮幅を模擬できるようにスライドバーをジャッキにて伸縮(ストローク量:800mm)できる機構を設けました。
実験状況および実験後のデータ分析により以下の事項を確認しました。
@.大気圧下においてテールシール拡幅、縮幅作動に問題がない
A.泥水圧の昇圧においての耐水圧(最大:0.5MPa)を確認
B.泥水圧下での拡幅、縮幅作動に問題がない
C.拡幅、縮幅作動時においてパテグリスの圧力管理により、泥水圧保持が可能
さらに、今回の一連の実験を通して、実用化に向けての課題の抽出を行い、実機への適用に対して対応が可能であることを確認しました。
今後は、地中接合工法全体のさらなる高度化を進め、大深度・大断面を対象とした道路トンネルの地中接合工法として、共同開発3社で積極的に技術提案を行い、実プロジェクトへの営業展開を図っていきます。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
技術本部土木部
都市トンネルグループ
福居
Tel .
03-5427-8472
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図−2 拡幅テールシール装備状況(連続傾斜拡幅時) |
写真−2
公開実証試験の状況(拡幅・縮幅の作動確認) |
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