株式会社奥村組は、ダム湖の浚渫土を効率的かつ経済的に、固化処理及び再生利用が可能な「スラリー連続脱水処理システム」を開発しました。
【背景】
現在、全国のダム湖では堆積土砂が増加することによるダムの機能障害が起きており、ダム貯水池の治水・利水機能の維持、貯水容量の確保、流砂系を考慮した下流への土砂供給、堆積土の有効利用などを理由に、ダム湖の堆積土砂の処理が急がれています。
従来は、浚渫した土砂を天日乾燥する方法やセメント系固化材等を用いて土質改良する方法などが一般的に用いられていました。また、天日乾燥するヤードが狭小な場合には、フィルタープレスを用いた機械的脱水方法が採用された例もあります。しかし、天日乾燥の場合は、非常に広い処理スペースが必要となり、フィルタープレスでは、連続処理ができないため施工コストが嵩むといった課題がありました。
【工法の概要】
今回開発した「スラリー連続脱水処理システム」は、一次スクリーンと縦型スクリュープレスで構成されています。まず、浚渫土砂に含まれる礫や砂などを一次スクリーンで分級した後、このスラリーに凝集剤を加えて縦型スクリュープレスの下部に送ります。縦型スクリュープレスでは内部のテーパー状のスクリュー軸が回転することでスラリーが上方に移送され、外筒スクリーンとスクリュー軸との容積が除々に小さくなり、スラリーが圧縮・脱水されます。上部の排出口の開口量を検出し、スクリューの回転数を独自の方法で自動制御することで、処理土の強度を自在に調整することができます。(図-1、図-2、図-3、図-4参照)
ダム堆砂土を用いた本システムの実証実験では、高含水率のスラリーをスクリューの回転数制御で自在に強度調整できることを確認しました。たとえば、含水率70〜90%のスラリーをコーン指数400以上(第3種建設発生土相当)に処理することで、盛り土や埋め戻しなどの材料として、再利用が可能になります。
奥村組では、縦型スクリュープレスの採用で、設置スペースの縮小化を図るとともに、固化処理土の品質確保、省力化、処理コストの低減を図りました。
【本システムの特長】
本システムの特長は以下のとおりです。
・縦型スクリュープレスの採用によって、処理スペースが、天日乾燥に比べて1/10、フィルタープレスに比べて1/2となり、狭い場所にも適用可能。
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フィルタープレスを用いた機械的脱水方法に比べ、コストダウンとなる。
・連続処理が可能で、省力化が図れる。
・幅広い土質に適用できるとともに、処理した土砂の再利用が可能。
今後は、本システムの実現場への適用を実施していくとともに、積極的な技術提案を行い、実プロジェクトへの営業展開を進める計画です。また、泥土圧シールド工法で排出される掘削土砂の減容化や泥水シールド工法の泥水処理設備への応用など、他工種での実験を、今年度中に実施する予定です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
東京支社 機械部工務課
石橋
Tel .
03-5427-8523
株式会社奥村組
関西支社 機械部技術課
戸澤
Tel .
06-6625-3553
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図1 奥村式スラリー連続脱水システムのシステムフロー
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図2 奥村式スラリー連続脱水システム(縦型スクリュープレス)のイメージ図
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図3 縦型スクリュープレスの連続脱水イメージ
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図4 出口開口量とシャフト変位量を制御したコーン指数管理方法概略図
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