株式会社奥村組、日立造船株式会社、新日本製鐵株式會社の三社は、道路トンネルの新しい分岐合流部の接合工法を開発しました。
【背 景】
従来、地中に先行構築された本線トンネルにランプトンネルを接続する方法として、分岐合流箇所を開削する工法が一般的でしたが、都市部における開削工法は、地上作業用地の確保が難しいことや、周辺環境への振動・騒音などの問題があります。
近年、本線トンネルとランプトンネルを地中で接続する工法が開発され、別々に間隔を取って施工された両トンネルの離隔区間の上下を覆うような土留め支保工や地盤改良を行ってから地山を掘削し、セグメントの一部を開口して分岐合流部を構築する工法などが提案されました。しかし、これらの工法を採用した場合も、分岐合流部の接合箇所の幅員が大きくなり、都市計画道路幅内に収まらなくなることや、土留め支保工や地盤改良が大規模となるため、施工コストおよび工期が増大することなどが課題となっていました。
【工法の概要】
今回開発した『CV拡幅工法を用いた分岐合流部の地中接合工法』は、道路トンネルの非常駐車帯などの築造を目的として渇恆コ組、日立造船梶A新日本製鐵鰍フ三社で共同開発した「連続可変拡幅工法(CV拡幅工法:Continuously Variable Section Shield Method・平成13年6月新聞発表)」をランプトンネルの施工に採用し、先行構築された本線トンネルをランプトンネルのCV拡幅シールド機で直接切削することにより分岐合流部の接合を行う工法です。
地中で連続的に断面を拡幅、縮幅できるというCV拡幅工法の最大の特長を活かして、分岐合流部以外のランプトンネル施工区間では所用の建築限界を無駄なく掘進することが可能です。また、分岐合流部の接合区間では本線トンネルを直接切削した後に内部構築することにより、道路幅員を最小限にできるとともに、直接切削箇所の補助工法も小さい範囲となります。
本線トンネル3車線、ランプトンネル2車線の道路トンネルの分岐合流部を例に各区間の概要を以下に記します(図−1参照)。
区間T:接合前であり、本線、ランプトンネルともRCセグメントの覆工とし、ランプトンネルは標準断面(最小断面)で掘進します。
区間U:ランプトンネルを連続拡幅しながら最大拡幅断面(拡幅量:2,700mm)になるまで掘進を行います。本線、ランプトンネルとも鋼製セグメントの覆工となりますが、本線トンネルの接合側には直接切削可能なセグメントを組立てておきます。
区間V:最大拡幅状態のままCV拡幅シールド機にて本線トンネルを直接切削します。この区間は車線合流前であり、中壁を設置します。
区間W:ランプトンネルの車線が本線側に順次シフトしていくことから、ランプトンネルを連続縮幅しながら標準断面(最小断面)になるまで掘進します。
区間X:接合終点までランプトンネルを標準断面で掘削します。
CV拡幅シールド機で本線トンネルを切削する際には、本線トンネルの接合側に仮設中壁を設置し、貧配合モルタル等を充填しておきます(図−2参照)。また、接合部開口の際には、仮設部材(柱、横梁)を設置し荷重を受け、凍結工による止水の後、両トンネルの接合部に接続ピースを設置することにより構造の一体化を図ります(図−3参照)。
なお、接合前の小判型RCセグメント、分岐合流部の鋼製セグメントと内部支保材の合成構造、施工時の仮設部材に関して、土被り、土質、地下水位など荷重条件をパラメーターとした構造計算により検証確認しています。
【特 長】
1.本線トンネルは円形断面であり、シールド機に関しては地中接合のための特別な仕様変更は不要です。
2. ランプトンネルの標準部は小判型断面形状で、拡幅部は上下の水平部分を拡幅して扁平小判型断面形状としています。施工区間ごとに掘削断面が必要最小限となることから敷設道路の幅員が小さく、都市計画道路幅が狭い場合に有利となるとともに、掘削土量が少なく経済的かつ環境への対応に優れています。
3.接合部の完成時は覆工+内部支保材(鋼製梁)のみで荷重を支持するため、外部からの補強構造が不要で非常にシンプルな構造となります。
4.分岐合流部は本線トンネルとランプトンネルの直接接合となることから、併設施工した双設トンネルを切広げる工法などと比べると補助工法が大幅に低減でき、コストダウン(10〜20%程度)、工期短縮が可能となります。
今後は、CV拡幅シールド機のテールシール部の止水性検証を目的とした性能確認実験を今年度中に実施するとともに、共同開発三社で積極的に技術提案を行い、実プロジェクトへの営業展開を進める計画です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組
技術本部土木部 都市トンネルグループ
福居
Tel .
03-5427-8472
日立造船株式会社 ジオテックマシナリー株式会社 設計部
花岡
Tel .
044-288-2592
新日本製鐵株式會社 建材開発技術部 土木加工建材技術グループ
三 宅
Tel .
03-3275-7277
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図−1 『道路トンネルの分岐合流部地中接合工法』の概要図

図−2 ランプトンネルによる本線トンネル直接切削

図−3 開口時の仮設部材の設置状況
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