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株式会社奥村組は、山岳トンネルの低振動･低騒音掘削用として開発した小型軽量スロット削孔機「スロットスター(商品名)」を、水力発電所のリニューアル工事に適用し、稼働中の発電機に影響を及ぼすことなく、低振動･低粉じんで、発電機基礎コンクリートの解体撤去工事を終えました。
施工場所は、東北電力株式会社の薮神発電所（新潟県北魚沼郡広神村）です。
今回は、完成後約60年経過した水車・発電機を新規の水車および発電機に取り替える工事で、周囲の基礎コンクリートを解体撤去し、機械新設のための新たな基礎工事を行うものです。2機の発電機のうち１機を稼働しながら、他の１機を取り替えます。
工事に際しては、稼動中の発電機に振動や粉じんによる影響を与えないよう、コンクリートを解体撤去することが要求されました。そこで、｢スロットスター｣とワイヤソーを併用し、振動および粉じんを防止しながら基礎コンクリートをブロック状に切断して解体した後、搬出する工法が採用されました。
同工法は、中国電力株式会社打梨発電所の水車発電機取替工事(2期)で平成13年度に初めて採用され、振動および粉じんを抑制しながら効率よく工事を終えた実績があります。打梨発電所では、3台ある発電機を順次取り替えることになり、2期工事では新しい3号機を稼動させたまま1，2号機を取り替えました。
薮神発電所の工事では、床版の一部を残したままで基礎コンクリートを解体撤去することが求められました。作業場所上部に床版があるため、打梨発電所での工事と比べて作業高さに制約があるだけでなく、｢スロットスター｣他作業機械の搬入および搬出、切断したコンクリートブロックの搬出に際し、きわめて狭い作業空間で工事を行わざるを得ない状況でした。しかし、コアドリル等の小型機械を併用することによって、打梨発電所工事と同様、計画通りの成果が得られました。
｢スロットスター｣は、岩盤やコンクリートに溝を掘るための小型･軽量で高効率の２連式のスロット削孔機です。本機は、市街地に近接した山岳トンネルにおいて振動、騒音の影響を周辺に及ぼすことなく掘削する工法として多くの実績を有する｢ＳＤ工法(商品名)｣に使用する目的で古河機械金属株式会社（社長：吉野哲夫）と３年前に共同開発したドリルです。小型軽量であるため、トンネル工事で通常用いるドリルジャンボや油圧ショベルにも容易に搭載することができます。このため、開発以来、小断面トンネルや比較的小規模な岩盤掘削工事、あるいはコンクリート構造物のリニューアル工事など、6件の工事で採用されてきました。
今回の解体撤去工事の施工手順は以下のとおりです。
① 撤去する基礎コンクリートに対して鉛直下向きに、｢スロットスター｣により(部分的にコアドリルを併用)深さ1.5～1.8ｍの連続溝を作成し、ブロック状に切断。
② ブロックの底面をワイヤソーで切断。
③ 分割したブロックを発電所の天井クレーンで搬出。
以上の方法によって、稼働中の発電機に振動および粉じんの影響を及ぼすことなく、順調に工事を進めることと、当初予定工期を約１ヶ月短縮することができました。
今後、さらに狭い作業スペースでも効率的にスロット削孔ができるよう、スロットスターの小型化と鉄筋や金物の切断もできる装置の開発を進め、コンクリート構造物の解体撤去工事や岩盤立坑掘削工事等に、積極的に適用して行く予定です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組 技術本部土木部
萩森 Tel 03-5427-8580
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◇ＳＤ工法と｢スロットスター｣について（補足説明）
ＳＤ工法は、スロットドリル(ＳＤ機)を用いて、トンネル外周や掘削面に適宜自由面を設けることにより、振動･騒音の影響を周辺に及ぼすことなく山岳トンネルを掘削する工法で、施工実績は本四連絡道路舞子トンネルをはじめ30件となっています。
｢スロットスター｣は、従来の4連式ＳＤⅢ型機の実績をベースに開発した2連式のＳＤ機です。
｢スロットスター｣の特長は以下のとおりです。
① 小型･軽量の2連式ドリルであり、通常用いるドリルジャンボはもちろん、小断面用のレール台車や、油圧ショベル等にも容易に搭載可能です。
② 機械経費を節減できる分のコストダウンが見込めます。
③ 短期間の小規模なＳＤ工事、大型重機の使用が困難な小断面トンネル、立坑工事、ダムの穴あけ工事など狭い空間での工事にも適用できます。
④ 削孔性能、装置の耐久性は、過去に実施した６件の工事で実証されています。
スロット削孔中の状況
床版にあけられた開口部からブロック状に
切断された基礎コンクリートを搬出
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