突起型拡幅シールド工法を開発
株式会社奥村組、Hitz日立造船株式会社、新日本製鐵株式会社の3社は、シールドトンネルの拡幅技術として、突起型断面形状のシールド機を用いた「突起型拡幅シールド工法(FV拡幅工法:Back Filling Variable Section Shield Method)」を開発しました。
シールド工法による東京湾横断道路の開通以来、都市部の高速道路建設にシールド工法の適用が広がる中で、非常駐車帯、曲線部の視距拡幅、ランプ・合流部等の地中でのシールドトンネルを部分的に切り広げ構築する技術が求められています。
これは、地上環境、地下構造物や大深度等の施工条件では、開削工法や凍結工法等によって地盤改良を行い坑内から人力により切り広げる方法が、工期、経済性、安全性等から難点があることに起因しています。
今回開発したFV拡幅工法は、突起型拡幅部を有するシールド機にて掘削を行ない、拡幅の必要な区間のみ突起形セグメントで覆工し、標準部は円形セグメントを組立て、発生した空隙部を間詰め充填するシールド工法です。間詰め材は、環境保全および経済性等を考慮し、骨材にシールドの掘削土砂を再利用します。
今回検討した道路トンネルの非常駐車帯におけるトンネル断面は、種々の拡幅部セグメント形状について試算設計を行い、それに対応するシールド機掘削機構、テール部構造等を考慮して、側方に半円状の突起を持った形状としています。(資料―1、2)
開発にあたって以下のことを検証し、実用化の見通しを得ました。
@シールド機テールシールの止水性能
シールド機テール部において、拡幅部の半円突起形セグメントと標準部の円形セグメントの切替りの際に、シールド突起部根元湾曲部の止水性が課題になります。ワイヤーブラシを用いた特殊テールシールを考案し、実物大模型で0.5Mpaの耐圧性を確認しました。(資料―3)
A突起形セグメントの構造
半円突起形状の拡幅部セグメントは標準部円形セグメントに比べ大きな断面力が発生するので、高い剛性を得られる鋼製とします。鉛直土圧を1.5D、全周地盤バネモデルで試算し、一般的な鋼製セグメントで製作可能であることを確認しました。(資料―4)
B間詰め材の長期安定性
間詰め材の要求性能は通常の裏込め注入材と同様ですが、本工法では充填量が裏込め注入量と比較して多いので、長期的な安定性が重要になります。シールド掘削土砂を再利用した間詰め材の1年の長期にわたる体積変化、圧縮強度試験を実施して、一般裏込め注入材より優位性があることを確認しました。
C間詰め材の充填性
標準部セグメント組立て時、通常の裏込め注入と比較して大きい空隙が生じるため、充填性が課題になります。1/5縮尺の突起型シールドモデルで空隙部への充填土槽実験を実施し、十分な充填管理を行なえば地盤変状を抑制できることを検証しました。(資料―5)
本工法の特長は以下のとおりです。
@ シールド機は拡幅機構が必要無いので構造がシンプルです。
A トンネル標準部は円形RCセグメントを使用するため、構造的な安定性、耐久性に優れており、経済的にも安価です。また、拡幅部セグメントは、半円突起形状で高剛性の鋼製セグメントを使用します。
B トンネル標準部の空隙に充填する間詰め材は、環境保全に配慮し、シールド掘削土砂を再利用します。
C コスト試算では、側道を非常駐車帯とするシールドトンネルと比較すると8〜10%の
コストダウンが可能です。
今後は、本工法の実用化を目指し、より完成度を高めていく計画です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組 関西支社土木技術部
堀見 Tel .06-6625-3806
FV拡幅工法(突起型拡幅シールド工法)