株式会社奥村組は、『ブーム掘削機の機械データを利用した地山評価システム』を開発し、山形自動車道のトンネル工事に採用した結果、切羽岩盤の良否を客観的に判定できることを実証しました。
山岳トンネル工事では、切羽岩盤の良否を正しく判定し、その結果を掘削方法や支保パターンへ適切に反映させることが重要です。従来この判定は、経験を積んだ技術者が切羽岩盤の観察結果を点数化する「切羽評価点法」で行われ、その判定方法の有用性は多くの実績によって認められています。
本システムは、切羽評価点法における切羽観察の迅速化と、精度向上を目的としたものです。
ブーム掘削機は、機体前方のブーム先端に多数のビットが取り付けられたカッタヘッドを、回転させながら岩盤に押付けて掘削するもので、カッタヘッドの押付け力や、ブーム振動、掘進速度などは、掘削する岩盤性状の違いによって変化します。その中で、特にブーム振動が敏感であることに着目しました。
掘削時のブーム振動は、掘削機のブーム上面に振動計を設置して計測し、押付け力、回転力などは油圧センサーで計測します。これらのデータを計測制御装置に集めて1秒ごとに平均化した後、無線機を用いて送信します。後方の受信収録装置でこれを受信し、パソコン画面上に計測データを表示して記録します。
さらに、1掘削分のブーム振動振幅の絶対値から算出した平均振幅値と切羽評価点の関係式を過去の実績から事前に求めておき、掘削終了時には、ブーム振動の平均振幅値から算定した切羽評価点を同じパソコン画面上に表示します。
本システムを適用したトンネルは、山形自動車道の青野トンネルと高原トンネルで、地質は中硬質〜軟質の流紋岩および流紋岩質凝灰岩です。両トンネルとも、近接する供用中の同自動車道T期線への影響を低減するため、全線ブーム掘削機による機械掘削で施工しました。
適用の結果、経験を積んだ技術者の判定した切羽評価点と、本システムによる評価点とが、トンネル全線にわたって同等の判定性能を有することが明らかになりました。両者を相補的に使用することで、経験を積んだ技術者の単純ミスや経験の少ない技術者の判定ミスを排除でき、切羽判定の精度が向上することが実証されました。
本システムは以下のような特長を持ち、実用的なシステムになっています。
(1) トンネル全長にわたり、連続的な評価が可能。
(2) 掘削サイクルに支障をきたすことなく、リアルタイムの評価が可能。
(3) 計測から結果表示まで完全に自動化されており、メンテナンスフリー。
奥村組は今後、本システムを積極的にトンネル現場に適用し、さらに判定精度の向上を図っていく予定です。
以 上
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渇恆コ組 技術研究所地盤研究室
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図−1 システムの概要

図−2 計測処理フロー

図−3 ブーム振動と切羽評価点の比較(高原トンネル) |