梁端開孔補強研究会(委員長:株式会社奥村組、主査:株式会社熊谷組、株式会社淺沼組、安藤建設株式会社、大木建設株式会社、五洋建設株式会社、大末建設株式会社、テイエム技研株式会社、日産建設株式会社、株式会社松村組の10社)は、鉄筋コンクリート梁の端部に設備配管用貫通孔を設けても要求される構造性能が確保できる補強法と設計法
『MAX−E工法』 を共同開発し、財団法人日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得しました。
財団法人日本建築総合試験所で取得した建築技術性能証明の内容は以下の通りです。
「MAX−E工法 設計指針」によって設計される材端部に開孔を設けた鉄筋コンクリート梁は、長期荷重時および短期荷重時の材端梁筋応力がそれぞれの許容応力度に達した状態においても、設計で保証すべき要求性能を満足していること、また、材端部に開孔のない梁の曲げ終局強度を有し、かつ、目標としている塑性変形性能を有すると判断される。
従来、集合住宅等の建物では、階高の制約や換気設備の必要性によって、梁に貫通孔(以下「開孔」)を設けることが一般的です。住戸プランにおいては「設備配管用の開孔を梁端部に設けたい」との要望が多いものの、構造性能確保の観点から梁端部に開孔を設けることを避けてきました。これは、端部に開孔を持つ梁が地震等の外力を受けると、補強が適切でない場合には、開孔近傍で脆性的な破壊を起こす危険性のあることが既往の研究から知られているためです。
そのため、従来の梁では、変形性能を確保するよう柱面より梁せい以上離した位置に開孔を設け、設備類の配管を迂回して通しているのが一般的です。また、これまで開発されてきた全ての既成開孔補強筋は、この範囲を適用対象としています。これに伴い天井の一部に設備配管を収納するための下がり天井を採用するなどの対応が必要になり、住戸プランにおいて大きな制約を受けています。この問題を解決するべく、梁端部に開孔を設けることを可能とする開孔補強法の開発が強く望まれていました。
そこで、本研究会では、梁端部に開孔を設けることが可能となる開孔補強法を新たに開発しました。
本工法は、開孔補強筋MAXウエブレンEと、普通異形鉄筋を∪形に折り曲げ成形した開孔補強鉄筋(以下「座屈補強筋」)ならびに開孔の両脇に配置する孔際補強筋により梁端部の開孔を補強し、設計で要求される終局強度と変形性能を確保するものです。
この∪形の座屈補強筋は、終局時に梁主筋の座屈を防止するとともに、開孔部近傍のコンクリートの圧壊、剥落の遅延効果があり変形性能を増大させ、かつ開孔部のせん断強度の増大にも寄与します。
従来は、開孔を柱面から梁せい以上離さなければならないものが、本工法により、梁せいの1/3から梁せいに相当する区間で任意の位置に設けることが可能となりました。
本工法の適用範囲の概要は以下の通りです。
@開孔直径: D/3.5以下かつ300mm以下
A梁端部柱面から開孔中心までの距離: D/3以上、かつ、1.0D未満
[梁中央付近にも同時に開孔配置可能]
B入力せん断応力度: (QL+Qmu)/(bD)が0.07Fc以下
[QL:鉛直荷重時せん断力、Qmu:梁曲げ終局強度時せん断力、b:梁幅、D:梁せい、
Fc:コンクリート設計基準強度、21≦Fc≦54N/mm2]
開孔の直径の適用範囲がD/3.5以下であることから、開孔直径が175mmの場合には梁せいが650mmの建物に、開孔直径が200mmの場合でも梁せいが700mmの建物から適用できます。また、入力せん断応力度の適用範囲が0.07Fc以下であることから、せん断応力度が高い中高層建物の梁に対しても適用できます。
本工法により、下がり天井の出隅部分の張り出しが最大で梁せいの2/3、すなわち450mm〜650mm程度小さくすることが可能です。このため、居室空間が拡大するとともに、住戸プランのバリエーションが増え、居住者のニーズに合致した建物の設計が可能になります。
今後は、設計事務所やゼネコン他社に対して、本設計・施工法に関する技術供与を行うとともに、開孔補強筋MAXウエブレンEの製造と販売についてはテイエム技研株式会社が担当し、全国に普及展開を図ってゆく予定です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組 技術研究所
0298-65-1835
細矢 博 |

図1 従来工法と本工法の開孔位置の比較

写真1 従来工法での設備用配管の収まりの例

写真2 従来工法での下がり天井の例

図2 本工法での開孔部の配筋の例

写真3 施工実験における開孔周辺の配筋状況 |