株式会社奥村組は、公共事業の新規着工件数が大幅に減少する中で、今後需要増加が予測されるコンクリート構造物のリニューアル事業の営業活動を強化するため、このほど、鉄筋コンクリート構造物の劣化診断と劣化進行予測および補修による延命予測を行なうシステムを開発・実用化しました。
本システムによって、リニューアルの重要な項目である補修時期、方法、コストを、データに基づいて提案することができます。
システムは「グレーディングによる判定」「塩害・中性化の進行予測」「ライフサイクルコストの算定」という3つのプログラムで構成されており、パソコンを用いて鉄筋コンクリート構造物に関する次の評価、診断、予測が行えます。
◇ 構造物の劣化原因と劣化程度の評価・診断
◇ 構造物の塩害・中性化の予測
◇ 補修工法の選択とライフサイクルコスト評価
各プログラムの内容は次のとおりです。
・グレーディングによる判定
日常的な目視点検結果を入力して、現状の劣化状況および主要な劣化原因(塩害、
中性化、アルカリ骨材反応、疲労等)を判定する。
・ 塩害・中性化の進行予測
構造物を取り巻く環境条件による劣化外力およびコンクリートの品質、またはコ
アサンプリングなどによる劣化測定データから、塩害と中性化の進行を予測する。
・ ライフサイクルコストの算定
構造物の劣化進行予測から、補修工法とその時期、点検等を考慮し、そのコスト
を求める。コスト比較が容易に行え、維持管理計画を立てることもできる。
中核的なプログラムである「塩害・中性化の進行予測」は、有限要素法により初期塩分量および表面濃度の変化を考慮して、塩化物イオンの拡散浸透解析を行ないます。中性化の予測には、物理化学的モデルを用いています。また、『土木学会コンクリート標準示方書(維持管理編)』に基づいたルートt則による中性化の進行予測もできます。このプログラムの特長は次のとおりです。
@ 塩化物イオンの拡散浸透予測を、初期塩分量および表面濃度の変化を考慮して行なうので、精度の高い予測が可能。
A 逆解析の機能を持ち、過去や現在の塩化物イオン測定結果から拡散係数を推定し、構造物ごとの特性に合った高い精度の劣化予測ができる。
B 中性化の予測には、物理化学的モデル(炭酸ガスと水酸化カルシウムの反応モデル)を用いており、補修効果を評価できる。
C 供用期間中の補修に対応して、塩化物イオンの浸透および中性化の進行を予測できるので、補修範囲や補修時期による効果を比較できる。
本システムによって、劣化程度を判定し、劣化進行を予測することで、適切な補修時期、補修工法を選定することができます。また、補修効果とライフサイクルコストを、パソコン上で比較判断できるという利点を生かし、最適なリニューアルの提案が可能です。
今後、本システムをコンクリート構造物のリニューアル事業の営業支援ツールとして積極的に活用していく予定です。
以 上
【お問い合わせ先】
株式会社奥村組技術研究所
東 邦和
茨城県つくば市大砂387
TEL 0298-65-1716
FAX 0298-65-0782 |
システムのフローと、橋脚を対象として、無対策、表面保護、断面修復のライフサイクルを評価した結果を図に示します。
図 システムフローとライフサイクルコスト評価
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