一般に、免震建物では基礎の下に免震装置を配置し、建物の荷重を免震装置で支えるとともに、建物の固有周期を長周期化することで免震性能を発揮させています。
現在最も普及している積層ゴム方式の免震建物の固有周期は、建物の荷重と積層ゴムの復元力によって決まります。この固有周期は、積層ゴムが支える荷重が大きくなるほど長くなり、復元力が大きくなるほど短くなります。
しかし、積層ゴムが支えられる単位面積あたりの荷重には限界がありますので、大きな荷重には大きなサイズの積層ゴムが必要になります。大きなサイズの積層ゴムは大きな復元力を発揮しますので、荷重が大きくなることによる長周期化の効果を低減し、積層ゴム方式の免震建物の固有周期は、概ね3秒程度が限界となります。
一方、「免震化する建物が高層」「立面形状が細長い(例えばペンシルビル)」「平面形状がねじれやすい形」「建物を支える地盤が軟弱」などの場合には、建物の免震性能を十分に発揮させるため、固有周期を4秒以上に長周期化する必要があります。
このような建築物に対しては、このたび開発したCRBを積層ゴムと併用することによって、免震効果を得ることができます。
@ CRBは、2本のローラーとこれを挟むレールを、建物があらゆる方向に移動でき るように、中間プレートを介して直交二段重ねにしたものです。ローラーやレール は、積層ゴムと同等の荷重支持性能を発揮しますが、レールがフラットなので復元 力がありません。したがって、全支承の1/2あるいは1/3を積層ゴムからCRBに替え、積層ゴムが負担していた建物荷重の1/2から1/3をCRBに負担させることで復元力の増大を抑え、免震建物の固有周期を4秒以上に長周期化することができます。
A 免震装置には減衰性能が要求されますが、CRBを併用すれば固有周期が長周期化 されるので、減衰性能を発揮するダンパーを減らすことができます。
B CRBは、荷重支持能力が高い円柱状のコロが転がる機構であり、同類の復元力のない免震装置である「ボールベアリング」や「直動レールを採用した装置」に比べて寸法がコンパクトなので、施工が容易になり経済的です。
C ローラーの転がり摩擦係数は1/1000以下(実機での転がり試験結果による)と小さいため、小さな地震でも作動します。
D 道路橋で使用実績の豊富な特殊ステンレス鋼を採用しており、耐久性に優れ劣化の心配がありません。